ギフト 誕生日の賢い情報
SがSの買収計画を撤回した理由は定かではないが、新聞報道によれば、ウォンの急落と世界的金融危機がその大きな理由であるという。
要するに、Sにとって買収資金を調達するコストが非常に高くなってしまったのだ。
世界的な不況で半導体市場は決して好調ではないので状況は複雑だが、TとSの競争がグローバル競争であり、投資競争、あるいは買収競争という側面を強く持っているとすれば、円高はTに有利に働く面もあるのだ。
グローバル競争の世界ではスピードが重要となる。
時間短縮のために、積極的にM&Aを展開することが求められる。
金融危機が吹き荒れる現在の市場環境の中では、円高パワーを活用でき、キャッシュの豊富な日本企業は有利な立場にある。
この機会を活かさないギャップがあったのだ。
結局は、GはPの提示に近い条件で買収に応じた。
金融危機の中で自らの資金ポジションが厳しくなり、早く売却したほうがよいという判断が働いたのだろう。
Pのほうも、そうした事情を見越して、低い価格提示を押し通したと思われる。
PにとってS電機の買収は、太陽光発電やバッテリーの分野での国際競争を勝ち抜く上で重要な意味を持っている。
地球環境問題が深刻になる中で、太陽光発電や電気自動車などの需要は急拡大すると予想されるからだ。
Pがこうした技術を自前で獲得するという方法も考えられるが、時間を短縮するという意味でも、S電機を買収するほうがはるかに有効だと判断したと考えられる。
円高の動きは日本の企業に二つのメッセージを出している。
一つは、国内に閉じこもるのではなく、海外に積極的に打って出よということ。
もう一つは、投資やM&Aを戦略的に行っていこうということである。
今後、こうした方向での事例が増えていくことを期待したい。
円高を活用する流通業
輸出企業は苦しいながらもグローバル展開を進めていく。
よいとして、では日本国内は大丈夫だろうか。
輸出企業が出て行ってしまったら、ただでさえ弱い国内景気がますます厳しくなるのではないだろうか。
日本は空洞化してしまわないだろうか。
こうした不安は根拠のないものではない。
次の章で詳しく検討するように、適切な政策転換をしないかぎりは、日本国内はじり貧になる可能性がある。
現実に、今多くの地方経済が厳しい状況に追い詰められているが、旧来型の経済運営では日本国内を活性化させることがもはや困難であることを示唆している。
ただ、円高になればなるほど国内経済はじり貧になる、という単純な議論にも問題はある。
円高によって活力が生まれる部分が国内にもあることを確認する必要があるのだ。
もう一度、1985年からの経験を振り返ってみよう。
1985年に一ドル約250円という円安であった円ドルレートは、その後急速に円高に移行していく。
85年のG5(先進5ヵ国)の蔵相・中央銀行総裁会議で決まったドル高是正策の影響だ。
いわゆるプラザ合意である。
プラザ合意を受けて、それから3年後には、円ドルレートは一ドル約35円までも円高になってしまった。
3年で倍の円高になったわけだから、きわめて急激な円高である。
当然、産業界からは「円高不況」を危倶する声があがった。
たしかに、輸出企業にとってみれば急速な円高で海外での競争力が大きく殺がれてしまったし、海外からの輸入品と競争するような産業、たとえば繊維産業などは、円高に乗じて入ってくる低価格の輸入品によって壊滅的な打撃を受けた。
後になって振り返ってみると、急激な円高が日本の景気を悪くするという考え方はまったく的外れであったことが分かる。
最初は円高の影響を受けたが、次第に円高で業績を上げる企業が増えてきたのだ。
その中心は、海外からの安い輸入品を積極的に利用する流通業界や、内需拡大に乗じて成長した不動産業界などであった。
実際のところ、円高の内需拡大効果は非常に大きかった業種なのだ。
株式市場でバブルまで起きてしまったという点だ。
円高で不況になるなどと騒ぐのではなく、円高で活性化する内需産業をうまくコントロールしながら景気が過熱しすぎないように注意を払うべきだったのだ。
今回の円高局面でも、すでに円高を積極的に活用しながら売り上げを伸ばしている企業がある。
その典型が流通業である。
先日、近所のUに行く機会があったが、店内は客で溢れていた。
私も何点か商品を購入したが、非常に安い出費で済ますことができた。
その上品質も悪くない。
聞くところによると、Uの商品はその大半が海外での縫製であるが、消費者が支払う代金のうち、海外に落ちる割合は非常に少ないようだ。
特殊な素材は日本で調達するだろうし、付加価値の多くは店舗オペレーション、マーケティング利益など、国内に落ちる部分のはずだ。
要するに典型的な内需型産業であり、円高の恩恵を受けることができる。
小売業の動きを見ると、他にも面白い動きが見られる。
Iグループが展開しているTやSが展開するSなど、小売業のプライベートブランドも好調である。
円高の中で、こうした動きはさらに広がっている円高によってチャンスを広げる内需産業はあるだろう。
円高の持っている内需拡大機能を過小評価してはいけない。
それでも従来型の内需拡大だけで日本の景気が劇的によくなるとはとても思えない。
これまでの延長線上で内需拡大を考えても、国民がそれに反応するとも思われない従来型の内需拡大と言えば、自動車、家電(3種の神器、新3種の神器)、住宅などであった。
これらの分野におけるモノの消費はもちろん内需の柱として重要ではあるが、少子高齢化が進んだ社会では必ずしも国民の最重要関心事項ではなくなるだろう。
減税などの財政刺激策で景気てこ入れをしても、従来型の消費が大きく伸びるとは考えにくい。
一方で、国民はサービスを中心とした生活面で様々な不満や不安を抱えている。
医療、介護、教育、育児サービスなどの分野である。
不満や不安を抱えているということは、正しい政策や制度改革が行われれば、大きな支出拡大が見込まれるということである。
具体的にどのような政策が必要であるのか、考察を進めてみたい。
市場規模で見ても、医療や教育の分野は非常に大きい。
たとえば、日本の医療分野への支出額はおおよそGDPの8%である40兆円ほどと言われている。
それでも先進国の中では、GDPに対する比率がもっとも小さい。
要するに医療支出が非常に少ないのだ。
それで国民が満足していればよいが、最近はいろいろ報道されているように、医療の現場は大変に厳しい状況である。
医療制度をどう改革するのかという問題は国民福祉の観点からも急務であるが、同時にそれで国民のお金がスムーズに流れるようになれば、景気や一雇用を支える有力な産業になり得るだろう。
誤解がないように付言しておくが、決して現行の制度をそのまま維持して税金や医療保険の負担だけを増やせばよいと言っているのではない。
国民が自主的に医療や健康分野への支出を増やす仕組み、つまり市場メカニズムがある程度利く仕組みを考える必要があることは言うまでもない。
また、コスト削減だけを追求する仕組みではなく、医薬品開発や医療技術でイノベーションが活発に起きるような市場のダイナミズムが生まれる産業に育てなくてはならない。
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